みなさんこんにちは。
今年度の夏の調査として7〜9月の間に3度、高知県にフィールドワークに行きました。また徳島県吉野川のカワウソ目撃現場に行き、カワウソを目撃した方に現場を案内していただきました。調査内容と成果をざっくりとまとめて書いていきたいと思います。久しぶりのブログ更新で初めて見てくださる方も増えてきているので調査の様子やカワウソの基本的な知識もあわせて書いていければと思います。
第一次夏季調査(7月の4日間)高知県西南部
第二次夏季調査(8月の4日間)高知県西南部
第一次吉野川調査(8月に1日)徳島県旧吉野川→別記事で書きます。
第三次夏季調査(9月の4日間)高知県西南部
調査日程は上記のような感じでした。最もカワウソが現れる可能性の高い時期(大潮)に合わせて海岸部を中心に捜索に行きました。
大きな発見は3つほどあり、確度の高い目撃情報が2件と海岸部でカワウソらしき生き物の目撃をしました。
カワウソ調査の様子
夏の調査では過去の調査記録から、大月町の海岸部での目撃が非常に多いので、海岸部での目視での調査をメインに行うようにしています。明け方と日没前の時間帯にカワウソが現れることが多いので、その時間帯はカメラを片手にひたすら海を眺めて過ごしています。
大月町の海岸
日中の時間帯は自動カメラを仕掛けたり、海岸をカワウソの痕跡を探しながら歩き回ります。夏の暑い中、熱中症になりそうになりながら痕跡を探し回るのは辛いものがありますが楽しみながらやっています。
大月町の磯場
海に流れ込む小さな川を登っている時に、カワウソのスプレイントの可能性がありそうな痕跡を見つけました。フンの形態は僕が過去に見つけたカワウソのスプレイントや動物園で見たカワウソのスプレイントに酷似しています。ただ魚っぽい匂いがあまりなく、歩き回って疲れ果てていたので持ち帰りませんでした。今となっては少し後悔しています。
カワウソのものらしきスプレイント
海に流れ込む小さな川の河口部は自動カメラの設置するポイントの一つです。高知県西南部に生息するカワウソは海と川を行き来しながら生活しており、海への小さな流れ込みを利用します。海岸部に生息するカワウソの個体群は海に迫り出す岸壁の窪みや岩の隙間にも巣を作りますが、エサとなるエビやカニ、真水を求めて小さな流れ込みも利用します。このような流れこみを少し上ったところに巣やねぐらを作ることもあります。
海への小さな流れこみ(貴重な真水となる)
たいちゃんのカワウソらしき生き物目撃
実は某日に高知県西南部のとある海岸で朝の10時頃、岸から50mほど先でぴょこっと頭を出す生き物を目撃しました。生き物の頭は真っ黒に見えました。その後10分おきくらいに何度か頭を出し、少しずつ岸際に近づいてきました。
僕が立っている場所は岸壁の斜面で海面を見下ろすような形になっていました。その生き物は岸から10mくらい先まで近づいてきて水中でくるくる回っているような、自由な動きをしました。(水が透明だったのでなんとなく水中で動くシルエットも見えた。)同行者は視力がかなり良く「この生き物は何?ぐるぐる回ってる」と言いました。
その後生き物の現れる距離がだんだん遠くなっていき、10-20分おきくらいに何度か水面に息継ぎに頭を出していました。残念だったのですがその時手元にカメラを持っておらず、急いで車に取りに戻りました。
その後しばらくして(その生き物と同一かどうかは分かりませんが)ウミガメが現れてウミガメの映像を撮ることができました。僕は「なんだ、ウミガメだったのか」と思ったのですが、やはり最初に見た生き物が水中をくるくる遊泳していたことが気にかかりました。僕より視力も良くカワウソなど特に知らない同行者に聞くと「最初に現れていた生き物はウミガメとは別の気がする。くるくる回ってたし、お腹も白かったよね。」と言いました。
僕が撮ったウミガメの映像を見ると確かに頭は黒っぽいのですが、最初に見た生き物と頭の出し方と潜り方が違う印象を受けます。ただ、ふらっと立ち寄った場所でのあまりに突然の出来事にテンパっていたので冷静に確認できなかったかもしれません。
いずれにせよ、10-50mほどの距離で海面から頭を出す生き物を何度も見たにもかかわらず、目視では判別できなかったことに自分自身驚いています。ウミガメは以前何度か海で水面に頭を出すのを見たことがあり、カワウソは動物園やインターネット上の動画などで嫌というほど観察して潜り方のパターンまで研究しています。実践はとても難しいと感じました。
今後は海で水面に頭を出す生き物を見たという目撃情報に触れた時に、目撃者が一般の人でかつ目撃した生き物の頭が黒いという場合、まずウミガメとカワウソの判別はつかないだろうということが分かりました。(もちろんウミガメの確率の方がずっと高い)10mより近い距離で、自分が意識して見ている範囲にタイミングばっちりにその生き物が現れないと判別するのは難しいと思います。海面がざわついていない、水に濁りが入っておらず透き通っているなどの自然条件も関わってきます。
Japan otter clubのカワウソを何度も見ているメンバーいわく、「波があったり、20m離れたらもう識別できない。自分は数メール手前で見たからカワウソだと認識できた。頭を出すのは一瞬。」とのこと。
ポジティブに考えると、僕たちの過去の調査のパターンとして、「カワウソが現れる時はウミガメもよく一緒に出てくる」ので、カワウソとウミガメが同時に出てきていた可能性もあります。あの時カメラを持っていたらなぁと悔しい気持ちです。以降カメラを常に携帯するようにしていますので次こそは撮りたいです。
ちなみに僕がカメラを取りに行ってる間に同行者は少し別の場所に移動して海を観察していたのですが、大きなウミヘビみたいな細長い生き物がスッーと海面に浮かんできた。」と言っていました。細長い生き物が水面に浮かんでくる感じはカワウソっぽいなぁと思いますが、まあ次に期待しようという気持ちです。
謎の生き物が複数回水面から頭を出す
以上がカワウソらしき生き物目撃のお話でした。
カワウソ目撃情報について
1件は高知県西南部の河川で3年前の目撃です。2件目も上とは別の高知県西南部の河川での20年前の目撃です。
この2件は何度かカワウソを見たことがあるという方が川で泳いでいるカワウソの姿を見たという話で詳細な描写や様々な動物の写真を見ていただき確認をとったところ、カワウソの可能性が極めて高いと僕は判断しています。
他にも少し確度は下がりますが目撃情報は何件かあります。
会う人みんなにカワウソの情報を聞いていると、時々すごくいい目撃情報(客観的な判断でもカワウソの可能性が極めて高い)に出会います。
目撃情報も別記事にまとめて書いていきますので、楽しみにしていてくださいね!スタンスとしてはおいおい全部公開していきたいと思っています。
付記
調査ごとの詳細な内容を書いていきたいという気持ちがあるのですが、本業が忙しくブログの更新に手が回っていない状態でした。これからはカワウソ調査に行った帰り道にでもその都度記事を書ければいいなと思っています。
他にも嬉しいお知らせがいくつかあります!
最近メディアの取材を何件か受けています。また公開されるはずなのでそちらも楽しみにしていただけると嬉しいです。
もう一件は、高知県の某大学のDNA研究者の方がフンなどの痕跡のDNA解析を協力してくださることになり、かなり機動的にフンの解析を行うことができる体制が整いました。早速、他の生物種の可能性の高いものも含めいくつかサンプルを送っています。
コメントいただけるとブログを書く意欲が湧きますので、背中を押していただけますと嬉しいです。書きたいことはたくさんあります!!!
引き続き楽しみにしていてくださいね〜〜!