ニホンカワウソは本当に絶滅したのか?
その3までやってきました!
なぜか分かりませんが昨年末からこのブログのビューがかなり増えています。
マニアックなカワウソブログを読んでくれている皆さんありがとうございます☺️
質問やコメントなどもどんどん募集しています😆
ニホンカワウソの目撃を言えない理由はいくつかありますが、今回紹介するものは少し話が込み入っています。
そもそもニホンカワウソという動物は綺麗な河川に生息し、魚を主食にしています。基本的に魚介類以外は食べません。しかも大食漢で、毎日体重の10パーセント程の量を食べるので、生きていく上で一日あたり1〜2キロの魚が必要です。鮎などの川魚だと数十匹程になる計算です。
つまり、ニホンカワウソはその生息場所や食べ物において、人間の生活や仕事(漁業や河川開発、工事)と利害が衝突してしまうのです。
1日に大量の魚を食べるカワウソは生態系が豊かで餌となる魚やエビが豊富な川を好んで生息しています。カワウソの生息の決定的な条件は餌となる魚が豊富にあることと、巣作りや子育てがしやすい安全で川岸にアシやヨシが生い茂る自然が残されたままの河川です。
もちろん、魚が豊富な河川では人間も漁を行います。釣り人もたくさん来ます。
少し昔の話になりますが、昭和40年頃の愛媛県御荘町(現愛南町)のハマチ養殖業者とニホンカワウソの話を紹介します。
当時の新聞に「ハマチ養殖の被害300万円、養殖業者は県に補償を要求」の記事がある。
新聞各社は、ハマチ養殖業者の保護か、カワウソ保護かという対立をセンセーショナルに書いた。確かに、この頃、養魚場に入れていた魚が被害にあって、経済的な損失を受けた。カワウソは町の起死回生をかけて始まったハマチ養殖業の害獣となり、密かに捕殺された。
(この話の続きは実は面白く、ハマチ養殖業者の向田さんが天然記念物のカワウソがこの辺りに住み着いた。それならばいっそのことと、入り江一帯をカワウソ村と名付けてカワウソ保護区を作ってしまった。しかし、カワウソの広範囲を移動する習性などから、カワウソ村の構想は失敗に終わった。)
この話を紹介した理由はお分かりだと思いますが、人間とカワウソは利害において大きく対立してしまうということです。
天然記念物であるニホンカワウソが貴重だと分かっていても、人間の活動の邪魔になると害獣扱いされ殺されてしまうのです。
もう一つ話を紹介します。
ある猟師が狩猟中に山中のせせらぎでニホンカワウソを目撃しました。そのことを猟友会の会長に報告すると、「その話を誰かにしたら、流れ弾が当たると思え。」と言われました。
天然記念物のニホンカワウソを目撃したことを公にすると、その地区一帯は狩猟禁止になる可能性があるからです。また河川の護岸工事中にニホンカワウソを目撃した場合も同じようにかんこう令(口封じ)がしかれることがありました。ニホンカワウソがいると工事が止まってしまうからです。
このような話は少し昔の閉鎖的な田舎ではよくあったようで、最近になって時効だと思った人たちがポツポツと証言することがあります。
2度ニホンカワウソを目撃している著名な釣り人の方は、「この話(ニホンカワウソの目撃談)は家族にも言えない。」と言っていました。テレビの取材とロケでも非常に遠回りに丁寧にされたようです。
そのことはよく理解できます。なぜなら、ニホンカワウソを目撃したとなればその地域にどれほどの影響があるか計り知れないからです。
この著名な釣り人の方も地域の人々に迷惑をかけたくないと話していました。
今回はニホンカワウソが目撃されてもその情報が表に出てこないケースを紹介しました。
とても悲しいことにニホンカワウソは人間と住む場所が比較的近く、利害関係にある動物だったのです。
しかし、だからといって”カワウソも悪い”ということではありません。
なぜ昔はニホンカワウソと人間が共存できていたのかを考えなければなりません。
人間が河川を開発し、三面をコンクリートで固め、自分たちの思い通りに川の姿や川の通り道を作り変えてきたのです。その結果、川の生態系は大きく崩れ、魚の数は激減しました。川の水は工場排水や生活排水で汚されてしまいました。
僕は昔のままが良かったとは全く思いません。世の中が発展して人々の暮らしが良くなることはとても素敵なことだからです。
しかし、このような思慮分別のない自然開発が確実にニホンカワウソの住処を奪ってしまったのも事実です。