ニホンカワウソ調査録

ニホンカワウソの調査・研究の記録 カワウソ目撃情報教はこちらまで→nihonkawauso2020@gmail.com

対馬カワウソ調査

お久しぶりです。対馬にカワウソ調査に行ってきたので調査内容をまとめます。

佐護川中流域の大きな淵(カッパが住んでいると言われている)

 

最新の対馬のカワウソ動向

2ヶ月前(2023年12月中旬)に佐護川で2度カワウソが目撃されています。

目撃者談「上流から海の方に向かって目の前数メートルのところで頭を出した。潜る時に太い尻尾まで見えた。イタチやテンなんかよりもずっと大きくてびっくりした。潜って泳いで行く方向に気泡が出たが、その後頭は出さなかった。息が長いんだろう。」

目撃者は川沿いの集落に住む80代のおじいちゃんでカワウソがいるという話は昔から聞いて知っていたが、見たことはなかったとのこと。カワウソを見た時は変わった生き物を見たと思って誰にも話していなかったが、1週間程してテレビにカワウソが出てきたのを見て、自分が目撃した生き物がカワウソだと確信したそう。

2件目の目撃情報は上記の目撃日から1週間ほど前、川沿いの畑で作業をしていたおばあさんが見たものです。場所は上記の目撃地点の数十メートル上流の対岸です。

目撃者談「川の上流から海の方に泳いでいて目の前で頭を出した。護岸の淵に沿って泳いでいた。こちらは薮の間から見てたからカワウソはこちらに気づいていないようだった。」

カワウソ目撃地点の佐護川河口域

また、2022年11月と12月にも対馬の地元の方でヤマネコの保全活動やカワウソの調査をしている山村さんが井口浜でカワウソの足跡を発見しています。

 

佐護川と井口浜

佐護川の河口である佐護湾から北に岬を回ったところに井口浜があります。佐護川河口から井口浜まで直線距離では約2.3キロ、岬を回っても3kmほどです。

佐護川と井口浜の地理

佐護地域では2017年に山村さんが自動カメラでカワウソの映像を撮影してから現在(2024年2月現在)まで7年以上継続してカワウソの目撃やフン、足跡が見つかっています。

佐護川と佐護湾の海岸線を中心にカワウソが継続的に生息していることは確実です。野生のカワウソの平均寿命が5年ほどと仮定すると、佐護地域にカワウソが複数頭生息しているもしくは繁殖していると考えても不思議ではありません。

 

今回の調査について

今回は3日間佐護地域に限定して痕跡調査、目視調査を行いました。

海岸線と川沿いを歩きフンや足跡を探し、朝夕は河口で移動するカワウソが水面に息継ぎをするタイミングを狙って川面を眺めていました。

2日目の早朝、井口浜でカワウソのフンを発見しました。状態から2-3日程経過しているようで、匂いはほとんどありませんでしたが、魚の鱗と骨をたくさん含みケバケバしている特徴はまさにカワウソのフンに違いないと思います。こちらは協力いただいている某国立大学にDNA鑑定に出しました。解析結果が出るまで少し時間がかかるそうです。

井口浜で見つけたカワウソのフン

足跡を探す調査は潮が引いている早朝に波打ち際に沿って見ていくのが良いと山村さんからアドバイスをいただいていました。調査期間は毎朝確認しましたが、波打ち際には足跡は見つかりませんでした。一方波打ち際から少し上がったところにはくっきりとした足跡がたくさんついていました。

こちらは鋭い爪のつき方と指が横に広がっていない点からテンの足跡だと思われますが、足長8cm、幅5cmほどとテンの足跡にしてはかなり大きいように思います。砂につく足跡は掘れて大きく残るようなのでそれが理由かもしれません。

カワウソは目撃できませんでしたが、海を見ていると入江でイルカがたくさん泳いでおり楽しませてくれました。

また、写真は撮れませんでしたが、佐護川に巨大なブリが登ってきて驚きました。

非常に楽しい収穫の多い調査となりました。

 

環境省の調査と見解

環境省によるカワウソの調査は昨年度で終了しており、動向を監視するフェーズ(予算がついていないので実質何もしない)となっています。

環境省から発表されている調査結果を簡単にまとめると以下の通りです。

2017年第一回調査(7/11-18, 8/28-9/2の14日間)

見つかったフンのDNA解析の結果、3個体を確認。(佐護、仁田、志和)

2018年(1/12)

山村さんが見つけて提供したフンのDNA解析の結果、追加で1個体を確認。(佐護)

2019年第二回調査(10/14-21, 11/16.17の10日間)

足跡を確認(佐護)

2022年第三回調査(12/7.9.12の3日間)

足跡を確認(大船越)

2023年第四回調査(2/21.27, 3/6の3日間)

何も確認されず

環境省の見解としては”対馬のカワウソは韓国から漂着した個体であり対馬島内で定着していないため保護の対象ではない”と結論づけています。

 

考えていること

僕は対馬に生息しているカワウソは韓国からたまたま漂着した個体ではなく、昔から対馬に生息する在来の個体だと考えています。

理由としては主に以下です。

  • 佐護地域だけとっても昭和初期から現在までカワウソの生息情報が継続して存在すること
  • 環境省の調査においても全島に少なくとも四個体以上生息が確認されており、近縁関係の個体も存在すること(繁殖している可能性がある)
  • 対馬には元々、大陸由来の動植物が多数生息しており、今回対馬で発見されたカワウソがユーラシアカワウソのDNAを持っていたとしてもそのことは対馬のカワウソが韓国から漂着した個体であると判断する根拠にはならないこと
  • 調査で十分な痕跡が見つけられなかったことは対馬に維持可能な個体数が存在しないと判断する根拠にはならないこと(高知のニホンカワウソの例に同じ)

環境省の調査においてなかなか十分な痕跡が見つからなかったので、”カワウソの定着(種の維持がされていること)は認められない”という結論に持っていきたくなる気持ちはカワウソ調査をする人間としては少し理解できます。

調査自体がハードで目撃情報はあれどもなかなか十分な痕跡が見つからないからです。

しかし既に発見されているフンのDNAや足跡など証明される事実として7年以上佐護地域にカワウソが継続的に生息していることがわかっています。

対馬北部の佐護地域に7年間継続してカワウソの生息が続いていることが”定着”でないならば、環境省はまず定着の定義をはっきりと示す必要があります。

また、環境省が使う”定着”という言葉は対馬にいるカワウソは全て韓国から漂着した個体であるという前提に立っています。この前提に立つ限り過去の生息情報(僕が直接地元の人に確認したものだけでも、対馬では昭和初期から現在までカワウソの生息情報が継続して存在する)は全て無視され存在しないものとして扱われます。結論ありきの調査ではせっかくの素晴らしい発見も/何も発見できなかったことも漂流説の結論を裏付ける方向に解釈されてしまうのです。

 

佐護川の河川改修

現在、佐護川では大規模な河川改修が行われています。ほんの2kmの範囲で大規模な浚渫が3箇所、河川拡幅と護岸工事が同時に進行しています。河川拡幅された地点では冬場には真水が枯れてしまうことが危惧されます。

浚渫が複数箇所同時に行われるので川の水は常に濁ったままとなる

河川拡幅と護岸工事

佐護川の河川改修計画に関しては洪水や氾濫による災害の歴史、対馬の産業構造、河川環境の保全の働きかけなどいくつかの側面があり、一方向から簡単に話せるものではないのですが現在進行している工事を見る限りでは河川生態系に全く配慮されておらず、人と自然環境の共生が考えられているとは到底思えません。

河川改修が進むことによってカワウソの住む場所がなくなるということだけではなく、河川生態系が乱れ、ツシマヤマネコやマナヅル、ナベヅル、ホタルといった佐護を象徴する生物種も失われていくかもしれません。また、河川に沿って点在する集落、人の営みと河川環境が完全に分断されてしまいます。

このまま佐護の固有の風景が失われ続けるなら、数十年後、百年後の佐護には何が残るのかと想像すると胸が痛くなります。

 

対馬でのカワウソ調査は引き続きやっていきます。なるべく早くDNA鑑定の結果もお知らせしますのでご期待ください!

高知のカワウソ調査の動向など

 

久しぶりのブログ更新です。応援のコメントをくださった方本当にありがとうございます。とても励みになっています。


久しぶりの更新なので思ったことなどをつらつらと書いてみようと思います。


高知のカワウソの動向について

今年に入ってからも何件か目撃情報は耳にしています。

今夏は四万十川で川漁の講習を受けたので、四万十川に行く機会が多く、上流の窪川から、中流域の西土佐、河口部の下田まで幅広くウロウロしていました。


窪川の方面では今は無住の集落になっている海岸部で数年前にカワウソの妖獣が刺し網にかかっていたという話がありました。

道が崩れて塞がっているということで行けていないのですが、地図で見る限りカワウソがいるとするなら、人の集落も道もない動物の天国のような場所だなと思って見ていました。


中流部の十和村から西土佐にかけての範囲では、四万十川の支流の集落に住むおじいさんにカワウソのことを聞くと、「15年ほど前まではこの川のあそこのあたりでよく見た。崖から降りてきて、道路を横切って川に入っていったのを見て驚いた。横の家の人(故人)も同じ場所で何度も見ていて、カワウソの話をしたら漁ができんくなるって笑って話してた。15年ほど前に大水が出た時から見ないようになった」と言っていました。15年前というのはなかなか最近のことで、話の内容もリアルで面白いですね。


河口部の方では、四万十川支川の後川で「数年前に地元の人がうなぎを獲ってる時にカワウソを見たと言っていたけどほんとうかなぁ」という話を聞いた。


そういう訳で四万十川でもちょっと調査をしてみるとこういう話がぽろぽろ聞こえてくるようです。


今まで四万十川は調査範囲に入れていなかったのですがこういう話を聞くとすごく興味が湧いてきました。ただ上流から河口までとんでもなく広く支流もたくさんあるのでどう調査したものかという気持ちになりますね。

 


僕自身の体験談も一つ。

今年の夏はとにかくうなぎ釣りにハマって毎晩のように仁淀川とその支流に通っていたのですが、本流と支流の合流点でとうなぎ釣りをしていた時に、ドボンっと何か生き物が水中に飛び込んだような音を聞きました。大きな魚はよく跳ねるのですが、魚の跳ねる音とは明らかに違うので本当に驚きました。ライトを照らしても少し遠くて霧も出ていたのでよく見えなかったのが残念ですが非常にワクワクしますね。


暑い夏が過ぎてようやく日中も活動しやすくなってきました。

たくさん仕掛けている自動カメラのデータを全然回収できていないので、折を見てカワウソの痕跡探しとカメラのデータ交換に繰り出したいと思います。

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仁淀川のうなぎ

獲りすぎるのはよくないので食べない分はリリースします。場所によっては絶滅危惧種というのが嘘みたいによく釣れます。


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ギギも仁淀川ではよく釣れます。食べてみましたが、クセはそんなになく白身のたんぱくな味です。ナマズよりもあっさりしていて旨味はあまりないです。料理次第で美味しく食べられるかもしれませんね。

 

個人的には味は

うなぎ>>>ナマズ>ギギ

です。参考にしてください。

 

それではまた!

ブログ再開します

ブログ書くぞーという宣言です笑

近々きちんとブログ書きます&トレイルカメラで撮れた映像もYouTubeにアップしてみようと思います!

 

昨年の9月にせっかく高知に移住したのに、秋から冬にかけて仕事や生活リズム作りで結構バタバタしていて、調査もあまりいけてませんでした。

 

ただ仁淀川が近くなったこともあり、ふらっと何度か見に行ってまして、地元のお爺さんたちに話を聞くと、「十数年前にカワウソが泳いでるところ見たよ」っていう話を数件聞きました。大体の目撃が河口から数キロ範囲のあたりに集中していて(単純に道がひらけていて人が多いからという理由だろうけど)おもしろいなと思っています。

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(寒かったので焚き火しました)

 

大月や清水など幡多の方では「5年くらい前にカワウソが川で泳いでいるところをみた」という話があったり、「昨年の夏にカワウソが川から道路に出てきたところを見た」などいくつか確度の高い目撃情報はありまして、現場をみにいくと「ほ〜〜、良さそうな川は無数にあるなぁ。」みたいな雑な感想を改めて持っています。

 

一方対馬では昨年末に何度か200%誰が見ても紛うことなきカワウソの足跡の写真を対馬でカワウソ調査をしている山村さんが撮っていました。読売新聞に掲載されていましたね!

これはすごくすごく嬉しいニュースで、環境省の調査でもほぼ痕跡が見つからなくなって生息が怪しいなんて話も誰かが言っていたのですが、地元の方たちは昨年も何件も目撃しているみたいですね!

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5月か6月に対馬に行って野生のカワウソの映像を撮りたいと思っています!リベンジです!

 

ではまた近々きちんと調査のブログ書きますので楽しみにしていてください!

気軽にコメント待ってます!

 

 

 

ニホンカワウソ調査2022/05/15

毎月高知県にカワウソ調査に行っていろんな発見があるのに仕事が忙しすぎてなかなかブログを書けていなかった。

新幹線に乗って車窓の景色を見ながらエモーショナルな気持ちになっているので、その勢いで書いていこうと思う。

いつから書けていなかったか分からないけれど、ここ半年くらいで高知県で確度の高いカワウソの目撃情報はたくさんあった。そして初めて対馬に調査に行って奇跡が起きた(これは別記事でみっちり書きたい。もし需要があれば)。自分のカワウソ調査に対する気持ちの変化もあった。

一つずつ吐き出す感じに書いていくのでまとまらないかもですがお付き合いくださいmm

 

まず目撃情報から

①僕がメインで調査している高知県西南部、よくキャンプをしている大月町の海岸から数百メートルほど南の磯場で今年の2月にカワウソの目撃情報があった。目撃した方は地元おじさんで夜の干潮の時間帯に貝をとりに磯場に降りていたそう。降りていってすぐに潮だまりでバシャバシャしている動物を見た。第一印象はかなり大きいと思った。横を通るとちょっと岸側に避けていったが逃げる様子はない。ヘッドライトで照らしてみるとカワウソそのものだった。おじさんは中学生の頃、大月町の某砂浜で弱っているカワウソを捕まえた時のグループの一員だった。そのカワウソはその後すぐ死んで剥製になっている。(ニホンカワウソ界隈ではよく知られた話)ということでカワウソを見たこともあるしなんなら捕まえている。直接話を聞いて(お決まりのいつもすることだが)ニホンカワウソの写真を色々見せたが、磯場で2月に見た動物はこの写真の生き物で間違いない、カワウソに間違いないと言っていた。なんなら、他の野生動物なんかとは全然違って、髭が長くて、口から喉元が白くて、尻尾持って背負ったら地面につくかというくらいでかいんだ(それはちょっと大袈裟だが笑)と説明を続けてくれた。聞き取り調査では、よくよく話を聞いて写真を見せるとやっぱり違うかなということもたまにあるのだが、カワウソをきちんと知っている人はカワウソの特徴をきちんと認識していて、きちんと描写することができる。その描写にカワウソの特徴と少しも食い違うことがなければその話は間違いないと僕は判断している。

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②上記目撃の磯場から1kmほど北側の磯に流れ込む川で夜にエビ獲りの仕掛けをしている時にカワウソを見たという話。その目撃者もカワウソを過去に見たことがあり、走り方がイタチみたいにぴょんぴょん走る感じでイタチよりも何倍もでかいという風に描写していた。(だだこの話は10年くらい前かなぁという感じで時期の詳細はわからなかった)

③上記同じ川で昨年、猟犬がカワウソの幼獣を噛み殺したという話もあったが、その話はそれ以上の詳細は分からず真偽を確かめられないので判断は保留としている。

④そのほかは四万十川支流や仁淀川などで数年以内の地元の方の確からしい目撃情報が数件あった。

 

そういうわけで「これはすごい、カワウソに間違いない」と思わされる目撃情報は2022年の今もちょこちょこ出てくる。カワウソ目撃情報は本当に嬉しい限りだが、それとは反対にカワウソの痕跡はなかなか見つからないのも現実。

環境省対馬のカワウソ調査の情報を調べていると、痕跡からDNAで判別できた4個体の生息が確認されており(2017-2018)、その後さらに力を入れて船を出して全島調査をしているが、2019年以降は全く痕跡が見つかっていないそうだ。

ただ、地元の方に話を聞くとその後もカワウソの目撃情報はあり、昨年末も地元の釣り人が海でカワウソを見たとのこと。環境省の数十人体制の全島調査でも、対馬という限られた範囲でカワウソの痕跡を3年間見つけられていないのだ。なぜ見つからないのかは分からないがそこから学べることがあるとすれば、過去に痕跡が見つかっている場所を再度徹底的に探しても痕跡が見つからないということはカワウソが移動している可能性は高いだろう。

対馬の話はまた別の回に回して高知に戻る。

高知大学に協力いただいてカワウソらしき生き物の痕跡があればDNA解析をしていただけることになっている。過去に一度カワウソに間違いない痕跡を見つけたのにそれを解析できずにすごく悔しい思いをしているので、即座にDNA解析できる体制が整っていることは調査をする上で何より心強い。しかも今回はカワウソ意外の生き物のものでも一定数解析をしてくださるので自身の知識をつけるためにもフンを見つけ次第色々送った。解析の結果を見て面白かったのはテンのフンにも季節や場所よって色んなバラエティがあるということで、やはりフンの色、形、サイズは食べたものに大きく依存するのだということを改めて学んだ。

テンのフンのパターンを紹介すると、

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小動物や鳥の毛を大量に含んだ典型的なフン


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アケビばかりを食べたテンのフン(少し劣化しているが)

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べちゃっとしたタール状のフン

最初はテンのフンとイタチのフンとの識別ができないこともあったが、今はイタチとテンだけではなく、その他、日本に生息する中型哺乳類のフンの識別ならできるという自信ができてきた。また、一種類の野生動物にも季節や生息域によるフンのパターンがあり、野生動物の生息域による食性の幅広さと奥の深さを垣間見ることができた。野生動物は本当にたくましい。野生動物の生態については学術的にもまたまだわからないことは多く、一つ一つの学びがカワウソに一歩ずつ近づいていることを信じワクワクしている。

 

p.sそういえば新しいカメラを購入しました。以前のカメラよりも断然フォーカスが早く、光量が少なくても良い感じに撮れるので満足している。

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新しいカメラでバッチリ撮れたアナグマさん

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大月町の夕日

 

それではまた近々!

2021年度夏季調査

みなさんこんにちは。

今年度の夏の調査として7〜9月の間に3度、高知県にフィールドワークに行きました。また徳島県吉野川のカワウソ目撃現場に行き、カワウソを目撃した方に現場を案内していただきました。調査内容と成果をざっくりとまとめて書いていきたいと思います。久しぶりのブログ更新で初めて見てくださる方も増えてきているので調査の様子やカワウソの基本的な知識もあわせて書いていければと思います。

 

第一次夏季調査(7月の4日間)高知県西南部

第二次夏季調査(8月の4日間)高知県西南部

第一次吉野川調査(8月に1日)徳島県吉野川→別記事で書きます。

第三次夏季調査(9月の4日間)高知県西南部

 

調査日程は上記のような感じでした。最もカワウソが現れる可能性の高い時期(大潮)に合わせて海岸部を中心に捜索に行きました。

大きな発見は3つほどあり、確度の高い目撃情報が2件と海岸部でカワウソらしき生き物の目撃をしました。

 

カワウソ調査の様子

夏の調査では過去の調査記録から、大月町の海岸部での目撃が非常に多いので、海岸部での目視での調査をメインに行うようにしています。明け方と日没前の時間帯にカワウソが現れることが多いので、その時間帯はカメラを片手にひたすら海を眺めて過ごしています。

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大月町の海岸

 

日中の時間帯は自動カメラを仕掛けたり、海岸をカワウソの痕跡を探しながら歩き回ります。夏の暑い中、熱中症になりそうになりながら痕跡を探し回るのは辛いものがありますが楽しみながらやっています。

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大月町の磯場

 

海に流れ込む小さな川を登っている時に、カワウソのスプレイントの可能性がありそうな痕跡を見つけました。フンの形態は僕が過去に見つけたカワウソのスプレイントや動物園で見たカワウソのスプレイントに酷似しています。ただ魚っぽい匂いがあまりなく、歩き回って疲れ果てていたので持ち帰りませんでした。今となっては少し後悔しています。

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カワウソのものらしきスプレイント

 

海に流れ込む小さな川の河口部は自動カメラの設置するポイントの一つです。高知県西南部に生息するカワウソは海と川を行き来しながら生活しており、海への小さな流れ込みを利用します。海岸部に生息するカワウソの個体群は海に迫り出す岸壁の窪みや岩の隙間にも巣を作りますが、エサとなるエビやカニ、真水を求めて小さな流れ込みも利用します。このような流れこみを少し上ったところに巣やねぐらを作ることもあります。

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海への小さな流れこみ(貴重な真水となる)

 

たいちゃんのカワウソらしき生き物目撃

実は某日に高知県西南部のとある海岸で朝の10時頃、岸から50mほど先でぴょこっと頭を出す生き物を目撃しました。生き物の頭は真っ黒に見えました。その後10分おきくらいに何度か頭を出し、少しずつ岸際に近づいてきました。

僕が立っている場所は岸壁の斜面で海面を見下ろすような形になっていました。その生き物は岸から10mくらい先まで近づいてきて水中でくるくる回っているような、自由な動きをしました。(水が透明だったのでなんとなく水中で動くシルエットも見えた。)同行者は視力がかなり良く「この生き物は何?ぐるぐる回ってる」と言いました。

その後生き物の現れる距離がだんだん遠くなっていき、10-20分おきくらいに何度か水面に息継ぎに頭を出していました。残念だったのですがその時手元にカメラを持っておらず、急いで車に取りに戻りました。

その後しばらくして(その生き物と同一かどうかは分かりませんが)ウミガメが現れてウミガメの映像を撮ることができました。僕は「なんだ、ウミガメだったのか」と思ったのですが、やはり最初に見た生き物が水中をくるくる遊泳していたことが気にかかりました。僕より視力も良くカワウソなど特に知らない同行者に聞くと「最初に現れていた生き物はウミガメとは別の気がする。くるくる回ってたし、お腹も白かったよね。」と言いました。

僕が撮ったウミガメの映像を見ると確かに頭は黒っぽいのですが、最初に見た生き物と頭の出し方と潜り方が違う印象を受けます。ただ、ふらっと立ち寄った場所でのあまりに突然の出来事にテンパっていたので冷静に確認できなかったかもしれません。

いずれにせよ、10-50mほどの距離で海面から頭を出す生き物を何度も見たにもかかわらず、目視では判別できなかったことに自分自身驚いています。ウミガメは以前何度か海で水面に頭を出すのを見たことがあり、カワウソは動物園やインターネット上の動画などで嫌というほど観察して潜り方のパターンまで研究しています。実践はとても難しいと感じました。

今後は海で水面に頭を出す生き物を見たという目撃情報に触れた時に、目撃者が一般の人でかつ目撃した生き物の頭が黒いという場合、まずウミガメとカワウソの判別はつかないだろうということが分かりました。(もちろんウミガメの確率の方がずっと高い)10mより近い距離で、自分が意識して見ている範囲にタイミングばっちりにその生き物が現れないと判別するのは難しいと思います。海面がざわついていない、水に濁りが入っておらず透き通っているなどの自然条件も関わってきます。

Japan otter clubのカワウソを何度も見ているメンバーいわく、「波があったり、20m離れたらもう識別できない。自分は数メール手前で見たからカワウソだと認識できた。頭を出すのは一瞬。」とのこと。

ポジティブに考えると、僕たちの過去の調査のパターンとして、「カワウソが現れる時はウミガメもよく一緒に出てくる」ので、カワウソとウミガメが同時に出てきていた可能性もあります。あの時カメラを持っていたらなぁと悔しい気持ちです。以降カメラを常に携帯するようにしていますので次こそは撮りたいです。

ちなみに僕がカメラを取りに行ってる間に同行者は少し別の場所に移動して海を観察していたのですが、大きなウミヘビみたいな細長い生き物がスッーと海面に浮かんできた。」と言っていました。細長い生き物が水面に浮かんでくる感じはカワウソっぽいなぁと思いますが、まあ次に期待しようという気持ちです。

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謎の生き物が複数回水面から頭を出す

以上がカワウソらしき生き物目撃のお話でした。

 

カワウソ目撃情報について

1件は高知県西南部の河川で3年前の目撃です。2件目も上とは別の高知県西南部の河川での20年前の目撃です。

この2件は何度かカワウソを見たことがあるという方が川で泳いでいるカワウソの姿を見たという話で詳細な描写や様々な動物の写真を見ていただき確認をとったところ、カワウソの可能性が極めて高いと僕は判断しています。

他にも少し確度は下がりますが目撃情報は何件かあります。

会う人みんなにカワウソの情報を聞いていると、時々すごくいい目撃情報(客観的な判断でもカワウソの可能性が極めて高い)に出会います。

目撃情報も別記事にまとめて書いていきますので、楽しみにしていてくださいね!スタンスとしてはおいおい全部公開していきたいと思っています。

 

付記

調査ごとの詳細な内容を書いていきたいという気持ちがあるのですが、本業が忙しくブログの更新に手が回っていない状態でした。これからはカワウソ調査に行った帰り道にでもその都度記事を書ければいいなと思っています。

他にも嬉しいお知らせがいくつかあります!

最近メディアの取材を何件か受けています。また公開されるはずなのでそちらも楽しみにしていただけると嬉しいです。

もう一件は、高知県の某大学のDNA研究者の方がフンなどの痕跡のDNA解析を協力してくださることになり、かなり機動的にフンの解析を行うことができる体制が整いました。早速、他の生物種の可能性の高いものも含めいくつかサンプルを送っています。

 

コメントいただけるとブログを書く意欲が湧きますので、背中を押していただけますと嬉しいです。書きたいことはたくさんあります!!!

引き続き楽しみにしていてくださいね〜〜!

 

ニホンカワウソが絶滅したと思われている不都合な理由

みなさんこんにちは!

夏のカワウソ調査は既に2回行っており、今月末に今夏最後の調査を行う予定です!第三次夏季調査が終わり次第、調査内容をまとめて公開するので楽しみにお待ちください!今回はTwitterで発信した内容を改めて皆様にお伝えできればと思い加筆してブログで公開することにしました。

ニホンカワウソが絶滅したと思われている不都合な理由

1979年に飼育され逃がされた人馴れしているカワウソの映像が高知県新荘川で撮影される。そのカワウソは川遊びをしている子供と一緒に泳いだり、泳いでる最中に人間にしっぽをつかんで捕まえられたりした。普通の野生動物ではありえないことですね。

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それ以前もそれ以降もニホンカワウソの映像は撮られていないので、上記のカワウソの撮影がいかにイレギュラーなできごとかがわかる。環境省はこの映像をニホンカワウソ生息の最後の証拠としている。

研究者や民間のもの好きな人たちがたくさん調査をしたのでこの期間(1960-70年代)に初めてそれなりにニホンカワウソの生態や生息地の解明が進んだ。

戦後、学会の見解では、カワウソは絶滅しただろうと思われていたが、愛媛県宇和海にはいっぱいいるぞという話が地元から出てきたので、当時の道後動物園園長などが調査を開始してカワウソを再発見したという経緯があった。

【たいちゃん談: この頃から学会や学術研究者の間では、目撃情報が研究者に入ってこない、自分が目撃していない→もう絶滅しただろう、と安易に決めつける習性があったのだなと笑える話でもある。戦後も長野県や和歌山県など、日本全国にカワウソが間違いなく生息していたという証拠が存在する】

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道後動物園(現在のとべ動物園

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1956年から1969年までニホンカワウソが計6匹飼育されていた。


1980年〜カワウソブームが収束し(国や研究者にとっても個体数の減少や一般人の無関心から研究対象にしても成果がでないものになる)先代から意思を受け継いだ一握りのほんとにもの好きの人たちが調査をするようになる。2000年頃までは高知県の委託で複数回調査が行われている。

この間、細々とニホンカワウソの生息が確認される。(フンや足跡、休み場、捜索者本人の目撃など)とりわけ1990年代後半まで高知県西南部でカワウソの痕跡発見とカワウソの目撃を続けていたのが高屋勉さん。

【たいちゃん談: 高知県委託の調査は調査者の一部がカワウソの生存に対して懐疑的であったり、カワウソの痕跡に対する知見が少なかったり、調査方法が確立されていなかったりで、成果は上がらなかった。(別記事で調査の詳細を紹介します)この時期の調査で特に惜しむらくは今よりも痕跡はあり、それらしきフンや毛などが発見され議論されたが、当時の技術ではDNA鑑定ができなかったということ。その結果、可能性の議論に終始し、次の一手を考えられなかった。】

2000年〜調査者はさらに極一部の人のみになるも、細々と目撃情報は収集される。行政による調査は行われていない。

2010年〜カワウソ研究者の方が絶滅危惧種になる。もはやフィールドワークはほぼ行われていない状況だった。僕の知る限りだとニホンカワウソに関心を向けている方(情報収集や、目撃現場の検証など)は数人。継続的、定期的に痕跡調査などのフィールドワークをしている人はおそらくいなかったと思われる。例外的に2012年に絶滅宣言が出された後、目撃情報が急増し、愛媛県の委託で複数回調査が行われた(こちらもまた別ブログで紹介します)

今〜僕やみなさん
ニホンカワウソの数はかなり少ないながらもDNA鑑定が容易に行えることと、自動カメラ、サーチライトなど文明の利器を使えるようになった。

数年以内には絶滅していなかったことを証明したいですね。(生息場所などは非公開が良いでしょう。この辺りはみなさんと議論できればいいですね。また別記事で書きます。)

雑感

環境省は50年以上生息根拠がない野生動物を絶滅と定義している。
ニホンカワウソの絶滅宣言が出されたのは2012年であり、1979年に新荘川で(環境省が認めている)証拠が撮影されてから30年ほどしか経っていない。その間もかなりの数の目撃情報やフンや足跡などの痕跡が記録されているにも関わらず。

1990年代後半には長年ニホンカワウソの研究をしていた高屋氏が犬と喧嘩して、川を泳いで逃げていったカワウソを目撃している。こういった間違いのないカワウソの痕跡の発見から絶滅宣言が出されるまで10年程しか経過していない。この足跡をカワウソのものだと鑑定できる権威者がいなくなったこともあるが、絶滅宣言は本当に不思議だと思わされる。30年以上カワウソの調査をして天皇陛下にご進講された方が見つけた痕跡はカワウソの生息根拠にはならず、新荘川のイレギュラーな映像が最後の生息証拠とされている。

また、1990年に撮影された新荘川の足跡も賛否はあるがカワウソの可能性が高いと思われる。

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1990年11月に新荘川で撮影されたカワウソらしき生き物の足跡

 

さて、ここまで読んでいただくと絶滅という言葉がいかに陳腐で無意味で無根拠かがお分かりいただけたと思います←(環境省批判の意図はありませんが)

ツチノコネッシーを探しているのではなく、そこに間違いなくいるニホンカワウソを見つけ出したい。(もの好きな人たちが半世紀繋いできてくれたバトンを受け継ぎたいという気持ちです)

今月末に第三次夏季調査を行います。今回はいつもより長めに時間を取れそうなので、自動カメラの設置、痕跡調査、聞き取り調査をみっちり実施したいと思っています。少し涼しくなってきたので痕跡調査も本格的にできそうですね。調査の内容などはまた次回!

目撃情報は下記メールまで!

nihonkawauso2020@gmail.com

㊗️本が出版されました!

みなさんお久しぶりです!

 

6月下旬に講談社から「まぼろしの生きもの」図鑑が出版されました!🎉

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この図鑑はネッシーツチノコなどの幻の動物から、ニホンオオカミタスマニアタイガー、そしてニホンカワウソなど絶滅した(と思われている)生き物の生存可能性を科学的に検証する図鑑です。

 

子供向けの図鑑ではありますが、ニホンオオカミニホンカワウソなどの内容は非常に丁寧に取材されており、大人の方でも読み応えがあります。

 

なぜ急に宣伝と思われたかもしれませんが、実は!ニホンカワウソに関するページは僕が情報・資料提供させていただきました!🙌

 

図鑑の編集長を務めていらっしゃる方が本ブログを読んでくださり、取材のお話をいただきました。

昨年末から何度も取材をしていただき、現在の捜索状況や目撃などの情報を包み隠さずお話し、資料を提供させていただきました!

ニホンカワウソに関して最新の情報が書籍の形で更新されたことを非常に嬉しく思います。

 

話は変わりますが、数十年間ニホンカワウソを探していたおじいさんとたまたま出会いお話する機会がありました。そのおじいさんは開口一番「君に覚悟はあるのか」と僕の目を見て言いました。「もちろんあります」と即答しまたが、おじいさんは続けてこう言いました。「数十年間探してきて目撃したのはたったの2回、ほとんど毎朝定点観察するなどしてきた。商売を2回潰してまでカワウソに力を入れてきた。」

商売を潰したのは別の理由もありそうですが、言いたいことはよく分かります。辛うじて生き延びてきた数の少ない&警戒心の強い野生動物をこちらから探しにいくのは非常に難しいことです。そのおじいさんは足を悪くして捜索ができなくなったようですが、「自分が捜索していた20年前までいたのは間違いない。今もいるはずだ。」と言っていました。このような僕と同じ志?を持つ人がいたことに深い感銘を受けると共に現在までニホンカワウソ捜索の火を灯し続けてくれたことに尊敬の念を抱きました。

 

僕もニホンカワウソ研究を開始して5年、本格的なフィールドワークを始めて3年ほど経ちました。

やってもやってもなかなか目撃できず、情報も出てこず、厳しいなと思うことも多いのですがその過程も最大限に楽しみながらその瞬間まで一歩ずつ近づいていきたいと思っています。

 

カワウソ捜索でのちょっとした気づきや考えたこと、趣味のキャンプや釣りのことなど書きたいことは多いので、そういうものでもよければブログの更新頻度あげたいと思います!みなさんのコメントが励みになってます。頑張るぞー!


p.s来月高知県捜索です!